対岸の房総半島から
こちらに向かう
フェリーが見えた。


潮風と波の音と秀也の声を
静かに聞いていた。


「蓮音ちゃん…
彼は周りの期待が大きくて
気持ちが押し潰されそうなのは
わからなくはない。

だけど、ただ甘えて
寂しいからそばにいるのと
大切なものを幸せにする為に
幸せになる為に
そばにいるのとは
全く違うんだ。」


「そうよね…。
ずっとわかってたの。


わかってたけど
洋介が可哀想だからとか
必要としてくれてるなら
そばにいなきゃって
勘違いしてた。

今まで
優しくしてくれたから
愛されてる、

自分自身洋介と離れたら
寂しいから
離れられなかっただけなの。」


「うん。
ちゃんと彼に気持ち
伝えてごらん。

そして理解してもらうんだよ。」


秀也は立ち上がると
手を差しのべた。


蓮音は
その手にすがるように
立ち上がった。