『可哀想になぁ。
しっかり歩けんで
見ていてこっちが疲れるけん。』
その時だった。
傍にいた父親から思い切り
げんこつで頭を殴られた。
『情けなか!
お前には見えとらんのか?
あの子はお前に
憐れに思われんでも
しっかり自分の足で歩いてる。
お前の歩く姿の方が
ダラダラしとって
父さんは疲れるわ!』
頭を押さえながら
父を見上げると
父は俺には目もくれず
『お嬢ちゃん、
いつも家のお手伝い偉いなぁ。
車に気をつけて帰るんだぞ。』
そう女の子に声をかけて
手をあげた。
女の子はゆっくり振り向くと
にっこりとして頭を下げた。
そしてまた
身体を揺らしながら
歩き出した。
俺はその後ろ姿を黙って
いつまでも見ていた。

