夫婦橋〜鈴RINと響いたその瞬間TOKIに


『優しい子に育ってくれて
お前のこと誇りに思うわ。
女は口やかましい
ところもあるから
男は我慢しきれず
手をあげたくなる時も
あるかもしれない。

だけど
それはなんの解決にもならん。

女に手をあげる男は
ただの弱虫でしかない。

なよなよした
嘘の優しさなんて
いらないんだわ。

いつか秀也に
大切な人に思う人が現れた時
父さんみたいに
本物の強い男になって
必ず守り抜いてほしいと
母さん思ってる。』


俺の心に
母の思いが染み込んでいった。


店先で
父がお客さんの自転車を
修理するところを
見ていた時だった。

近所に小児麻痺で
上手く歩けない女の子がいて、
その子は家のお使いを
頼まれたのか
少し傾いた手首に
買い物袋を下げて
身体を左右に揺らしながら
ゆっくりと
通りすぎていくのが見えた。

俺はどうしてあんなふうに
歩くのかわからず
小さな声で呟いた。