祖父は大正生まれの
誇り高い人で
嫁である私の母と
折り合いが悪かった。

口喧嘩は日常茶飯事。

こっそり泣く母の背中を
撫でてあげると

「大丈夫よ…蓮音。
お母さん、すぐに
元気になるから
向こうにいっていて。」と

母親としてのプライドなのか…

娘の私を
寄せつけようとしない
母の態度と
私を抱きしめながら
母を悪く言う祖父に
子どもながらに
胸を痛めていた。

母も祖父も
仲良くなってほしいと
常に願っていた。


若くして亡くなったという
自分の母に
とてもよく似ていると
祖父は私を見つめては
頭や頬を撫で
可愛がってくれていた。

祖父の手は大きくて
ガサガサとした皮膚の感覚が
頬を撫でられる度に伝わった。


母の為に
祖父と仲良くしよう…
祖父が言った母の悪口は
絶対母に言わないようにしよう…

そう決めていた。


母も祖父も
仲良くなってほしいと
願っていた。


蓮音は祖父の茂宗も
母親の良美も
とても大好きだった。