中傷的な言葉を
これ以上聞きたくもなく
先を行く洋介に
着いていくしかなかった。

洋介は
蓮音を振り返るわけでもなく
先を歩いて行く。

駅前近くのカフェに入り
蓮音も後に続いた。


席に着くと
洋介は足を組んで
ワイシャツのボタンを
無造作に外した。


「お前待ってて暑かったよ。
ちょっと涼ませて。」


洋介は煙草を取り出し
慣れた手つきで火を付けた。


「日高くん…

煙草…吸うんだね…。」

「あぁ。お前は?」


「私は吸ったことないし
匂いが苦手だから。」


「あ、そうなんだ。」

軽く返事をすると
そのまま煙草をくわえて
コーヒーをオーダーした。

蓮音は居たたまれなかった。

S高生の洋介が
煙草を吸っていることよりも、
煙草の匂いが
苦手だと伝えても
まるで聞く耳持たず
何を話していいのかさえ
わからずに俯いていた。

「ねぇ。お前彼氏いる?
いないなら俺の女になれよ。」


蓮音は驚いて顔を上げた。