佐世保から広島、旭川。
そして
この土地に配属となった。
海と山に囲まれたこの地が
潮風と青く澄んだ空と
山からそよぐ風の匂いが
自分でも不思議な程
たまらなく気に入っていた。
第二の故郷のように…。
訓練中、夫婦橋の向かい側を
通るようになって
髪の長い小柄な女の子が
大きな鞄を肩にかけて
橋の真ん中で立ち止まり
川を眺めている姿が
目にとまった。
その子は
橋の下を覗き込むような
姿勢になって
小さな身体が
橋の下を流れてる川に
落ちてしまいそうだったんだ。
身を乗り出して
とても真剣な顔をして
何かに
耳を澄ましているかのように
俺の目に映った。

