「蓮音の彼
背が高くて長瀬智也似で
優しくていぃよねぇ。
車もあるしさぁ!
私の彼氏なんかおバカだし
不細工だしぃ。」
真由の言葉に
蓮音の眉が微かに動いた。
真由ちゃんは私が暴力を
振るわれてるのを…知らない。
高校時代の彼は優しかった。
K女子校に通っていた私を
静かに校門の近くで待ち
進学校のS高校の制服に
身を包んだ彼の姿は輝いていた。
私自身が
洋介の機嫌を損ねたのかと
常に反省して必死だったから
暴力を振るわれているとは
誰にも言えなかった。
(真由ちゃん…
洋介優しくなんかないよ…
ホントは凄く怖いよ…
でも…
誰にも言えない…
きっと私が悪いのだから…
だから殴られるんだよ…)
「そんなことないよ〜
真由ちゃんの彼
とっても面白いし
真由ちゃん一筋って感じだし!」
蓮音は真由に悟られないように
笑顔を作りながら応えた。
「私、少し眠ろうかな。
昨日心理学の復習してたから
眠くて…」
甘えるように
蓮音は真由の肩に寄りかかった。
「私も眠ろうっと。
携帯で彼と喧嘩になって
仲直りしたの
朝方だったんだぁ。」
真由も蓮音に寄りかかり
瞳を閉じた。
(きっと真由ちゃんの方が
私よりも何倍も彼と
仲良しなんだよ…
洋介は…
私のこと…
どう思っているんだろう。)
電車の揺れに身を任せ
蓮音も瞳を閉じながら
洋介を思った。

