「にゃぉー…」



沈黙を破ったのは窓の外にシルエットとなって現れた尻尾のスラッとした猫だった。

あたしは静かに扉を開いた。

わずかに開けた窓の隙間から艶のある毛並みをした黒猫がスルリと入り込んでくる。



「気を付けろ…マナ…コイツ…ただの猫じゃない…。」



セトは警戒を解かない。


猫はあたしの目の前の戸棚に飛び乗ると、まじまじと顔を覗き込んできた。

猫の真っ黒の瞳に自分が写る。



「あなた…」





マナが口を開くと同時にセトがあたしの前に立ちはだかった。



「お前っ!マナに何の用だ!!」



セトは猫を睨み付ける。



「ちょっとセト…この子何も…」



すると今度は猫の方がセトに猫パンチを食らわせた。



「にゃお!あんたじゃにゃい!」


バシッ!


「「っ!?」」



猫は猫パンチしたあと、涼しい顔をして布団の方に飛び乗るとふいっと顔を背けてしまう。





「騒がしいが…なにかあったのか…?」



リクが扉をあけて中に入ってくる。



「「リク兄!」」


「なんだよ二人して…」



リクを見るなりすがってくる二人を交互に見て苦笑いをした。



「コイツ!俺に猫パンチしてきたんだよ!」



セトは黒猫を指差しながら言うが…



「そこじゃないでしょセト!リク兄…この子日本語話したの!」



言うなりリクは眉をピクリと動かした。



「なに?」



リクは顔を背けた猫に近づいて言った。



「お前、何者だ…?」



黒猫はリクを横目でチラっと見ると、途端に目を輝かせ、姿勢を正し、上目遣いでリクを見た。


「あ…あの…る…ルビーと申しますにゃ。…あニャたは…?」


さっきの口調とは裏腹にまさに猫撫で声を出してリクを見つめている。

あたしとセトはそれを見て口をあんぐりと開けた。



「俺はリク。ルビー、お前ははどうしてこんなところに来たんだ?」



質問すると猫は可憐な動きをして答えた。


「はい、リク様…。あたいは…あニャたに会うためにここへ…」








………静寂………。







「「リク…様ぁ…?」」