部屋についたあたしはまずカップラーメンにお湯をそそぎ二人の前に追いた。



「で?二人はどうして学校休んでるわけ?」


唐突にあたしは質問を切り出した。

その後、あたしの質問にセトが答える。



「もちろんサボリ!な、リク兄!」



リクは、はぁ、とため息をついてから話し出した。



「違うだろ?今日はこれを持ってきたんだ。」



リクは手を合わせて目をつぶる。
一度の沈黙が流れ、
手をふわりと優しく広げる。
するとどこからともなく分厚い本があらわれた。




「…魔法書?」



マナは目をぱちくりしてリクをみた。



「お前のこと…調べた。」


「あたしのことが、この魔法書に乗ってるの?え、個人情報の流出…?」



焦ったあたしの横から今度はセトがわりこむ。



「ちげーよ、お前が…その…魔法使えるようになるためにだな…えっと…。」



セトは言いにくいことを言うときは親指で他の指の爪をさわる癖がある。


今も触っていた。



「…マナの魔法の使えない原因やそのような言い伝えなどはないか調べてみた」



見かねたリクがセトの言葉を割って入る。

リクが魔法書をペラペラめくる。



「魔法の使えない魔女…これだ。」



そしてリクが読み始めた。



『魔法の使えない魔女。
この世に2000年に1度魔法の使えない魔女が生まれることをご存じだろうか。
これは人間界と魔界の狭間から闇の入り口が生じ、環境が変化しつつあることが原因と考えられる。』



「………。」



あたしのことだ…。



「ここも見てくれ。」



リクはその文章の下の方も指差した。



『1月 ガーネット
2月 アメジスト
3月 アクアマリン
4月 ダイヤモンド
5月 エメラルド
6月 ムーンストーン
7月 ルビー
8月 ペリドット
9月 サファイア
10月 トルマリン
11月 トパーズ
12月 タンザナイト』



「なにこれ?」


「誕生石だ」


「ほうほう(そうそう)ほれをあふえるほ(それを集めると)…」



カップラーメンを飲み込んでから



「魔法が使えるようになるらしいぜ?」


「セト、ちゃんと飲み込んでから話せ。」



リクはセトを軽く睨む。



「だってよー、カップラーメン早くしないと伸びちゃうぜ?」



目の前にあるカップラーメンが、まだ開けないのかと上ふたがとれかかっていた。





「…そうだね、」



なんだか自分のことを言われてるのに実感がわかなくてとりあえずカップラーメンの蓋を完全にあける。


リクは心配そうにマナをみてから魔法書に視線を戻した。



「それでだな…、探しに行くか行かないかだが…」


リクが少し苦虫噛み潰したような表情をする。


「この魔法書……どうも嘘っぽいんだよな……。」


「そうそう、やけに新しいと言うか……。」


セトも今度は飲み込んだ後に行った。






この魔法書が真実かどうかなんて誰もわからない。
だけど……
このままじっとなんてしていられない。



「いく。」



セトとリクははっきりとそう言ったマナを見る。



「いく。あたし、その誕生石…全部探して魔法使えるようになって帰ってくる。
こんなの魔女じゃない…。いままで誤魔化し誤魔化しで生きていたけど、やっぱりみんなと一緒に魔法使いたい。だって魔法使いの娘だもの。」



そんな決意を聞いて少し驚いた表情を見せる二人。


そして…




「…おまえ…この旅がどんなに大変なものになるか知ってるか?」



セトが食べるのをやめてまっすぐにあたしをみた。



「…わかってる」


「回りには魔法使えるやつがたくさんいるんだぞ?」


「うん…」


「いままで皆が学校や仕事中でしか外に出れなかったお前がだぞ…?」


「わかってるよ…」


「周りからまたののしられてもからかわれてもそれでもおまえは…!」



「セト!」



セトのことばを遮りリクは首を横に降った。



「セト…もう少しことばを選べ…」



リクは優しいからいつもあたしを気遣ってくれる。

セトもきっと心配なのだろう。



「ううん、大丈夫。からかわれて罵られたからこそ…その人たちにみかえしてやるんだ。」


少し涙目になったのを堪えながらあたしは力強く言った。


あたしも前はちゃんと学生やれてた。

中学のときから魔法使える子との差がついてきて…学校をやめた。

そのときについた心の傷はまだ癒えてないが、少しでも希望があるならとあたしは直感で思ったのだろう。



それを聞いて安心したのかリクものびのびになったカップラーメンの蓋をあけた。