魔法の使えない魔女




家から離れ、しばらく歩くと住宅街に差し掛かった。

街は静けさに包まれている。



「……なんか町の様子が変だ…」



リクが呟く。

当然だろう、昼間だと言うのに人っ子一人いないのだから。

見ると上空に煙がモクモクと上がっていた。



「ちょっと…行ってくる」



リクはあたし達にそう言い残して素早く走り去って行った。



「ちょっと待ってよ、リク兄!」



あたしは言ったがもうすでにリク兄は町の奥の方に行ってしまっていた。



「…にしても静かだな…。」



セトはきょろきょろと周りを見渡していた。


武器屋、防具屋、魔法書屋…
さまざまなお店が立ち並んでいる。


宝石屋も迷うことなく見つけられるはずだった…が…。



「…なんだありゃ…」



あたしたちが見たのは、火事になって焼け焦げた宝石屋だった。



「……リク兄……。」



…見るとリク兄は険しい顔をして宝石屋の入り口の前に立ち尽くしている。



「今度は頑固ババアの宝石屋か…」

「最近増えてるのよねー、」



「え?」



見ると、この辺りの住人らしき人が口々に言っている。


よく見るとこの街の住人の半数以上は
ここに集結しているようだ。



「痛ったぁーっ!クソっ!この猫!!」



唐突に先程の住民が叫ぶ。

ルビーが悪口を言った住民の足を引っ掻いたようだ。


ルビーはふいっと住民に背を向けるとリクの方へ歩いていった。

リクの足元まで来るとスリスリとリクの足にくっついた。



「ルビー…。」



気づいたリクはそう呟きルビーを抱き抱えた。

マナとセトも同じようにリクのそばまで行った。



「中にまだばーさんがいるらしい…。」

「え?」



表情をひとつも変えずに言うリク兄は少し怖かった。



「この宝石屋には少しからくりが仕掛けてあるんだ。隠し通路を通ってきっともう避難しているはずだ…。」


「はあ…なんだ…。良かった…。」



しかし、安心しているマナとは違いリクはなおもまだ表情を変えない。


どうしたのかと問う暇もなくリクが言葉を続けた。



「…しかし…、この火事が自然現象とは思えないんだ。」



マナ達3人はリクの言葉を待った。



「…そもそも普通の火はこの宝石屋にはつかない。万が一の事故までも想定して出来た、からくり屋敷だからな。魔力のある宝石がさらにここのバリアを固くしているはずなんだ…。」

「リク兄…普通の火って…。」

「じゃあ…まさか…、、」



セトもマナも予測はついた。

リクはうなずく。





「誰か魔力を使って意図的に放火したんだ…。」





リクはここで初めてマナ達の方をみた。



「…行こう」

「行くってどこへ…」

「決まってんだろ、犯人を見たばーさんのところだ。」



リクは裏口を探しているのか歩いていく。

みんなもそれに続く。



「もしかしたら犯人は…」



ルビーのことを下ろし、真剣になったリク。



「ルビーの親を殺した犯人かも知れないしな…。」

「リク様…。」

「…あたしも行くよ?」



マナはにっこりした。

だって…仲間の親が大変なことになってるんだし…!



「俺も。」

「おいおい、どんな罠が仕掛けてあるかわかんないんだからみんなついてくるとあぶねーぞ?」



言いながらもどこかリクは嬉しそうだ。


すると、リクは少し高くなった塀を軽々しくジャンプして飛び越えた。



「…悪いな。ここは迷惑かけれねえ、お前らは正面から入れ。」

「あー!リク兄俺も行くって!」



セトは身を乗り出した。



「お前はマナを頼む。」

「はあー!?んなの聞いてねーよ!俺の力必要だろぉーー??!」



セトは消えていくリクの後ろ姿を見ていたが、観念したようでマナに向き直った。



「…どうする…?」



セトが言う。



「とりあえず…正面に行くか?ルビーも~…ってあれ?」




先程まで一緒にいたはずのルビーの姿が見当たらない。

マナはそのときひとつ考えが浮かんだ。

咄嗟に塀を見たが遅かった。


ルビーは猫の姿で塀と塀の合間をスルリとくぐり抜け走っていった。



「ルビー!」


マナは叫んだがもう聞こえていない。


「怪盗黒猫…。」


セト呟いたことはマナもきづいていなかった。