あたしは迷うことも無かった。
「うん、いいよ。って言うか…」
少ししてから…あたしは笑った。
「なんであたしが許可してるのー?あたしは協力してもらう身なのに~。あははっ、」
「………っ…」
あたしは空気をなごまそうと声を出して笑った。
リクは少しの間驚いた顔をしていたがすぐに一緒に笑ってくれた。
「ありがとな」
マナはコクっと笑顔で頷いた。
「明るくなってきたね…空…。」
「ああ。」
空は太陽が差し込み、日の出が始まっている。
「もうそろルビー起きちゃうから戻るね、」
「おう」
そう戻りかけたとき、
「おい、」
リクに呼びかけられてふりむく。
「なんかあれば言えよ、」
なにかを察したのかリクはマナにそう言った。
「ありがと」
あたしは家に戻った。
部屋に戻るとルビーはまだぐっすり寝ていた。
あたしは静かに支度を始める。
お気に入りの肩掛けポーチに分厚い魔法書から要点だけをメモした紙を入れる。
なに入れてけばいいのかな…。
そう考えたとき、ルビーが目を覚ました。
「ニャぁ…」
「あ、ごめん…起こした?」
「マナ…早いニャ…?」
ルビーはまだ寝ぼけてるのか、
目は半開きで話し方はゆっくりで片手はウサギのぬいぐるみにのせている。
「まだ寝てていいんだよ」
優しく言うと、ルビーはまたすやすやと寝息を立て始めた。
さて…。
準備完了。
…時計は6時を指している。
マナは部屋を見渡した。
これで最後になるかもしれない…。
マナは机の上にある写真を手に取り、見つめた。
「おばさん…おじさん…。」
川沿いに捨てられていたというあたしは
この人間の夫妻に拾われ、この家にきた。
今は仕事に行っているけれど、
月に1度は帰ってくる。
マナは置き手紙をした。
“おばさんおじさんへ。
いままでお世話になりました。あたしは少し遠くに行きます。友達と…セトとリク兄がいるから心配しないでね。もしも帰ってこなくても………”
「…………」
“探さないでください、おじさんおばさん、ありがとう。”
「…ふう…。こんなものかな…。」
今は仕事でほとんど帰ってこないが、
ここまで育ててくれたのは他でもないおばさん達だ。
10才になるまでは付きっきりで世話をしてくれたし、
何より普通の人間として育ててくれた。
まあ、おばさんたちはあたしが魔法使いってことは知らないんだけどね?
そう。そんなとき近所に住んでいたセトはよく遊びに来ていたんだ。
あたしの幼馴染みで、仲良くなったあたしに魔法剣というものを見せてくれた。
そしてセトの強い魔力を感じて寄ってきたのがリク兄。
リクがセトの剣を盗もうとして失敗して大喧嘩になったんだっけ…。
セトが一生懸命あたしのことを守ろうとしてくれたんだよね…
「ふふふ♪」
リク兄はいろんなことを教えてくれたね。
まあ当時は12才だったか…。
色々な記憶がこの家にはつまっている。
マナはひとしきり見渡したあと、
深呼吸をして家を出た。
「おせーよ、」
外に出るとセトがピカピカの剣をさらに磨きながらマナの方を見ていた。
「あはは、ごめんごめん。……それにしても…セト早いね?」
「あ?」
セトはあたし達3人の中では一番寝坊助なはずだ。
あたしより先に外に出てるなんて天地がひっくり返ってもあり得ないと思っていたのに…。
「悪かったな…。ワクワクしてんだよ…。」
セトは少しふてくされながら言った。
「……あたしも。」
呟くように言ったあたしの言葉がセトに届いていたかどうかは定かではない。
「お、セト、珍しく早えーな?」
リクも無事に到着し、
3人は顔を見合わせた。
……ずっと一緒だった3人。
これから…旅に出ます。
っと、その前に…。
「リク様あっ!」
屋根の上からみていたルビーが降りてくる。
リクは嫌な顔1つ見せずにルビーの頭をなでる。
これが怪盗の仮面なのかはたまたこうゆうのも悪くないと思っているのか定かではない。
「あたいを置いていこうとしたね…?」
ぷくーっと頬を膨らませるルビー。
「マナも、起こしてくれないニャンて、…この…裏切り者~っ!!」
「ごめんごめん、あんまり気持ち良さそうに寝ていたもんだから…」
「いいわけご無用!!ほら、リク様はあたいの王子様なんだからマナはそっちのボロっちいガキとケンカでもしてニャーw」
「な、なに~?ぼ、ボロっちいガキ~?」
まんまと挑発に乗ったセトが「あ゛ぁん?」とルビーを睨み付けた。
「まあまあ、セト大人げないよ、」
マナが言うとセトは
「お前に言われたくない」
と言った。
「え!?あたしはセトよりは大人だと思うんですけどー?」
「うるせーな、お前のがちびだろ、」
「身長じゃないもん、セトよりも精神年齢が…」
二人の言い合いが始まる中、
「やっぱ仲いいんだニャ?クククっ…」
とルビーが呟いていた。
「リク兄、まずはどこいくんだ?」
マナとの言い合いを切って、ワクワクと言うか期待の目で聞いてくるセト。
「俺のばーさん家」
リク兄のお婆様は有名な宝石店を開いていて、そこに数個だけ宝石があるらしい…。
しかしお婆様はすごく怖いお婆様で、お店に張り巡らされた厳重な警備といったらねずみ一匹でも容赦はないんだとか…。
「リク兄のばーちゃんかあ…」
セトが想像しながら言う。
リク兄のお婆様は何となく苦手だ。
「…俺だけ行って宝石もらって来ようか?」
そんな気持ちを察したのかリク兄が優しく言った。
「リク様が行くならあたいはついていくニャ。」
ルビーはリクの腕の中で撫でられている。
「ううん、あたしも行く。自分のことだし。」
「そか。セトはどうする?」
「俺もいく。」
座っていた丸太からセトは立ち上がる。
「じゃあみんなでいこう!」
「ニャア♪」
ルビーはご機嫌だ。
そうして4人…いや3人と1匹の旅が始まった。
