「うあっ!!」

思わず声が出る。

「沢村おはよー!昨日ぶりだな!!会いたかったぜー!」

芦矢 岳 (あしや がく) 。一緒のクラスで、僕にやたら絡んでくる厄介なヤツ。

そして―――――――


「なんでいっっっつも優一なわけ?」

隣でぶちギレてる姉。
そう、李花の彼氏。
つまり、さっきからずっとケータイさわってた相手、『ヤツ』だ。

「李花さんもおはよ。俺のこと沢村が大好きだからさー、李花さんだけ相手しちゃうとヤキモチやいちゃうから~。」

大きなフードを深く被っているが、長めに伸ばした茶色の襟足が鎖骨のあたりからはみ出ている。

「ずっと教室で一緒じゃん!席も隣でしょ?まあ女に絡むより全然いいんだけど…ちょっと仲良すぎ。うざい。」

切れ長の大きな瞳がギラギラ僕を睨む。

「僕は仲良くしたいと思ってない。仲も良くない。うざい。」

芦矢 は「え!?」とわざとらしい声をあげた。

「沢村ひっどー!!こんなに俺は愛してるのに!!」

腕をするりと抱きしめてきたが、こいつのほうが10㎝は身長があるし、がたいもいい。
僕はイライラしながら先を歩いた。