「え、これって…確か…」
「あっ!それは!!」
れもが私の部屋に来たのは1週間ぶりで。
キッチンの流し台に置かれたままの食器を見て、瞳を丸くした。
しまった!と思ったけれど、もう遅い。部屋を綺麗に掃除したつもりだったのに…
日頃の私をこの時ばかりは強く恨む。
れもは、スポンジを泡立てて黙々と食器を洗っていく。
「奈々、せめて水に浸けておいて下さいよ。油汚れが…」
落ちませんよね…
「ごめんなさいい…」
れもが恋人になって、早2ヶ月。
料理を職にしている彼氏を持って、美味しいご飯が食べられてラッキーと思っていたけれど…
私と性格が真逆。キレイ好き。几帳面。
埃ひとつ、髪の毛1本許さない彼。
初めて私の部屋に来たときは、言葉を失っていた。
「…嫌いになった?」
キュッキュッと、キッチンペーパーで食器を拭く背中に問いかける。
「…なるわけないです」
振り向いた彼は、優しく微笑んだ。
「でも、さすがに1週間食器を洗わないのはなかなか手強いですよ。クルミさん改め、ヒモノさん」
「それだけは嫌だ」
抱き寄せられて、おでこにキスを落とされた。
私はドキドキしっぱなし…
れもとの甘い時間。
「奈々、酒臭いですよ。ビール飲みましたね?」
「う…」
時々、酸っぱい。
しあわせ。
After Story the End.