「な、な…」
こんなに、名前を呼ばれることで特別な快感が自分を襲うなんて知らなかった。
「呼んで…」
低く心地良い彼の声。檸檬と、呼んでいいの?
薄暗い部屋の中で、彼の瞳が熱っぽく私を見つめる。
「れ、も…れも」
同じ速さで刻む鼓動も、強く握った手も、溶けてひとつになったみたい。
ピリピリとこの身を刺激して、そのまま溺れていく。
深く深く、染まっていく。
「ん…檸檬、すき」
出逢うことも、彼を愛しく想うことも、すべて決められた運命だったかのように、この気持ちに何も違和感がなかった。
苦しいくらい、彼が愛しいのだ。
今夜だけでもいい。
しあわせなんだ。
彼に抱かれて、なにもかも満たされていく。
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