「夏は…嫌いだ」
耳元で響く、低い声にぞくぞくと鳥肌が立った。
彼の鼓動が、伝わってくる。
ひどく愛おしい。
「こうやって…間違いが起きてしまうから」
腕が緩んで、私を見つめる視線さえ優しくて。
間違っていたの?私が篠崎さんに恋をしたことは、間違いだったのかな…
引き寄せられるように、唇が重なる。
夢でも、嘘でも、間違えでもなんでもいい。
私はこの瞬間を、しあわせだと思ってしまったのだから…
こんなに温かくて、柔らかい気持ち、ずっと忘れていた。
何度も心の中で鳴らす、しあわせだと。
今だけは、どうか許して欲しい…
彼に出逢って、恋に堕ちた。
それだけ。
それ以上を、求めないから…
.

