「僕には、結婚を考えている女性がいます」




私の甘い期待とは裏腹に、一気に奈落の底に突き落とされる。

息が止まってしまったように、喉が締まった。



「でも、クルミさんに惹かれる自分もいます。何故か分からないけど事実です」


はっと目を見張る。

そんな事を言われてしまったら、潔く諦められなくなる。

もうすぐそこまで、涙が上がってきているのに。


「僕は最低な人間だ」


そんな苦痛に歪んだ顔が見たいんじゃない。

私は、羽のように柔らかく微笑む篠崎さんが好き。


全部、私のせいだ。


私の恋は、許されない。


しあわせになんか、なれないんだ…



「篠崎さん、あたし…」




決して。




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