檸檬-レモン-



「まあ、そんなとこがいいんだけどさ」


つまみのエイヒレをかじる私は、ぴたりと止まってしまう。

前と違うのは、そうやって躊躇いもなく私を誉めてくれるところ。


「…そんな顔すんなよ、もう割り切ってるって」


「いや、嬉しいよ。あたしに女の子らしくなんて無理だもん」


本当に、山口を好きになれたらいいのに。

きっと毎日楽しくて、幸せになれるだろう。

自信がないのだ。
山口の気持ち以上に想えるようになるか、ただ傷付けてすぐに終わりを切り出してしまうのではないか。

でもやっぱり、山口は私にとって理解ある良き友達でありたい。

この関係を大切にしたい。そう思うのは、ただの私のわがままなのかな。

結局一歩踏み込むことを恐れて、逃げているだけなのかな。


けれど、篠崎さんへの気持ちは抗えない。


いつの間に、こんなに大きくなってしまったから…



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