檸檬-レモン-




「え…?」


一瞬、時間が止まったように何も聞こえなくなる。


「篠崎さんに、会いたい」



私って…こんな性格だったかな?

自分が自分じゃないみたい。


「会おうと思えば、すぐ会えますよ」


篠崎さんは、声色ひとつ変わらない。
柔らかく柔らかく、でもそれは造られたものなのかもしれないと。

頭の端で感じた。


「あたし、今実家に帰ってるんです…」


「帰ってきたら、またお会いしましょう」


「そうですね」


なんだろう、この距離。

一定の距離を保ったまま、おいかけっこしているみたいだ。

知りたいのに。

篠崎さんは踏み込むことを許してくれない。


連絡が来て嬉しいハズなのに、悲しい気持ちの方が勝っている。

こんなにも、胸の内をじりじりと焦がすのに。


夏なんて、大嫌いだ…



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