夢みたい。どうしよう。夢みたい。
「仕事でバタバタしてしまいまして」
「そうだったんですか…」
「クルミさん、緊張してます?」
そう言って、篠崎さんは笑う。
「かなり」
「僕だって緊張してますよ。店でまさか連絡先受けとると思いませんでしたから」
篠崎さんが緊張してるなんて嘘だ。
いつもと変わらない。
私はこんなにたじたじなのに。
「ビックリしましたよね…」
「えぇ、初めてです」
会いたい。
普段なら、階段を下りれば篠崎さんの住む部屋なのに。
今はこんなに遠い。
バッタリ、マンションのエントランスで会うことも出来ない。
篠崎さんのいる街に帰りたくなってしまう。
どうしても。
声を聞いたら、笑顔が見たいと望む。
あの、柔らかさに包まれたくなる。
「…いたい、会いたい…篠崎さんに」
火が点いた、導火線みたい。
加速して止まらない。
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