「なんかさ…長いこと一緒にいたから、家族みたいなもんなんだ。ただ、幸せでいて欲しいって」
山口は黙ったまま、電車の広告を見つめている。
その横顔はいつになく真面目で、仕事中の山口とはまた違う顔。
「じゃあ、元彼が結婚したって言ったら心から喜べるのか?家族ったら、そうだろ?」
やっと出てきた言葉は、何故か私の胸をギュッと握り潰すようなものだった。
「…喜ぶよ、多分」
「強がるなよ。絶対泣くよ、胡桃沢」
山口はフッと噴き出して笑う。
自分でもよく分からない。
きっと、喜ぶと思う…
私とは叶わなかった、辿り着けなかった場所だから。
「なあ…」
私があれこれ一人で考えていると、山口が私を呼んだ。
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