「こんばんは」


柔らかい笑顔が広がる。


「こんばんは…クッキー、ありがとうございました」


そう言うと、篠崎さんはより一層深く笑った。


「お味はどうでした?」


「すっごく美味しかったです」


あのレモンの爽やかな風味が蘇る。


「気に入ってもらえたようで、嬉しい限りです」


なんだろう。

彼の纏う空気が心地いい。


一緒にエレベーターに乗り込んで、篠崎さんが4階と5階のボタンを押した。


今日も、篠崎さんからは甘い匂いが漂う。


「あ、そうだ」


彼は何かを思い出したように財布から1枚のカードを取り出した。


「よかったら使ってください」


「これって…」




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