「そ、そんな落ち込むなよ。胡桃沢が落ち込んでるとアレだよ」


何、今さら照れてる?


「アレじゃ分からないよ」


けらけらと笑ってしまう。
なんだろう、私までくすぐったくなる。

山口はいい奴だけれど…


「何て言おうか忘れた。とにかく元気出せよ。何なら酒付き合うよ?」


「ありがと!でもこんな天気じゃなんか飲む気しないな~。せっかくの金曜日だけど」


毎週金曜日はだいたい居酒屋に行く私。

久しぶりに山口と飲むのもいいと思った。


「胡桃沢が酒飲まない金曜日なんてあるんだ」


「あるよ。早く梅雨明けないかな」


パラパラと落ちる雨は、さっきより弱くなった。

地下鉄の階段に入って、やっと雨から逃れる。



「ありがとう、山口」


「おう」



私ははっとして、急いで鞄を漁った。



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