店の中は、薄暗い............。


見渡すと、巨大な壺がどっしりと置かれているのが一目で分かる。
その傍にあるのは、クモの巣がはっており、埃のかぶった本棚だ。
カゲンのすぐ左の手前に小汚い木のテーブルが置かれてあり、その上に埃のかぶった分厚い本がどっしりと置かれてあった。
彼がその埃を払うと、本の名前が見えて来た。

《 The history of the Amur country 》

そこには、英語でアムール国の歴史と書かれてあった。カゲンは中身を開こうとしたその時、大きな蜘蛛が彼の手の上に登って来た。

「ひっ......」

カゲンは必死になって払いのけていると、誰かの声が聞こえてきた。

「......は順調だね」

「......えぇ、お陰様で」

ここの店員と思われる、大きな黒いハットを被ってうつ向いた半透明の男と、もう一人は男の方を向いているため顔は見えないが女性だった。

「さてと、ジュノ。今回はなんのご用かな?」

「闇の精霊の封印に使うお粉が減っちゃって......。あぁ、それからついでに本も借りていくわ」

「うーん。お粉と申されると、はて、これはどうかな?」

蜘蛛は腕まで登ってくる......。

「......しっ、あっち行け」

払いのけても、中々降りてはくれない。

ハットを被った男は、黒い粉が入った瓶を彼女に出した。

「これじゃあ、駄目ね。もっと強い力のお粉はないかしら?」

「これ以上、強い力の粉を使うのは君でも危険すぎる。悪いがこの、“ サタンの涙 ” で我慢しておくれ」

「それじゃあ、困るわ。今の私の力なら、いつ封印が解けてしまっても可笑しくない。......お願い、必要なの」

「......それでは」

すると男は、緑色の粉が入った細くて小さな瓶を出した。

「これでいかがかな? ............薔薇の茎を削ってそこに邪神の親指の爪を削った物を投入して作り上げた、“ ローズデス ” であります」

蜘蛛はカゲンの背中にまでよじ登って行く。

「あーもう、何だってんだよ」

必死に払いのけようとするが、このクモは粘り強い。

「副作用は?」

「人によっては、目眩を起こして気絶する作用がありましてなぁ」

「まぁ、いいわ。何とかなるでしょう。いくらかしら?」

「50,000パールだよ」

「え、なんですって」

カゲンは背中を本棚に押し付けて、クモを払いのけ様とした。

......ガタガタガタ。

蜘蛛はようやく降りたものの、背中を本棚に押し付けた拍子にいくつかの本をガタガタと落としてしまった。