「あのコウモリか」

二人の近くにいたアスハはそう呟いた。

そして二人は、彼の方を振り向く。

「あのコウモリって?」

カゲンは即座に聞いた。

「時々、アムール国に侵入しては
元居た帝国へ戻って行くんですよ」

「......だからか。通りで、この辺の奴にして
は薄気味悪いと思ったよ」

すると後ろの方から鳥肌を立たせながら
ダスラは言い出した。

彼女のすぐそばにいるナーサティヤ
は、ソーマのおかげで爆睡中である。

「っていうよりキモいよキモい!」

すると、カゲンはすぐさま立ち上がり
彼女の口を抑えて言った。

「聞こえるだろ」

その間、エンデュはクールな眼差しでアス
ハに問いていた。

「............目的は?」

「さぁ......僕にはサッパリ」

「............そうか。他国の怪しい侵入者とい
い、不自然にあの遺跡にいたナキアといい............肌寒い予感がするな」

「あぁ」

共感するかのように、カゲンは言うとダス
ラの口から手を離した。

「......はーーっ」

彼女は息苦しかったのか息を大きく吐い
た。

「ちょっと、私を殺す気?」

「......悪いな、ダスラ。こいつはレディー
の扱いに慣れていない」

エンデュは、クールな口調で説明した。

「たしかに、それは共感できる」

アスハは、さらりと言った。

「なんだよそれ、どういう意味だ? 」

「......」

エンデュは何も言わずに、ただにやけた。
そんな一面を見ると意外にも、彼は小悪魔
なのかもしれない。