隼人は、これからサッカーの部活だった。下は紺色のジャージ、上はロックTシャツを身に付けて学校へ向かう。

しかしながら、正直言って気が重い。

突然、後ろから力強く誰かに肩を叩かれた。

「よ!」

友達の和田 朝陽だった。
彼は、陽気な性格だが見た目はダサい。

和田家は貧乏でお金がなく、朝陽は何年も昔の汚れが染み付いたTシャツに下は、お下がりのぼろぼろの指定ジャージをいつも通り身につけていた。

「......」

「なんだよぉ。親友の俺にあえて嬉しくな
いのかい?」

「......」

会話をする気力さえ、わかなかった。

「あ! そう言えば聞いたぞ?
佐藤先生の授業サボったんだってな」

「頼むから、その事だけは突っ込むな」

しかし、彼は隼人の声が届いていない様でそのまま話を続けた。

「よりによって、まさかお前が授業をサボ
るなんてよっぽどの事があったんだろう? ......なぁ、遠慮すんなよ。悩みがあるなら
俺に言え」

「虐めだよ......部活の。まぁ、教室でも同じだけど............」

「あぁー。だから、言ったじゃないか。
一緒に美術部入れば良かったんだよ。
まぁ、気持ちは良く分かるよ。
俺なんて、ずっと俺を見ながら絵を書いて
る女の子がいたから似顔絵でもかいてる
の? って聞いたら、ええそうよ。って言ったから見せてって言って見せてもらったんだよ。そしたら、うんこの絵が書いてあったんだ。
そしたら......これがあなたよ、ソックリで
しょ? って」

冗談混じりの言い方で彼は言い、隼人の方を振り向いた。

「......」

隼人は無表情で彼を見つめては、また、前に視線を戻した。ジョークで気持ちが軽くなれるような程小さな悩みではない。

もちろん朝陽は、少しは元気になって欲しくて言ったに過ぎないが......。すべった事がよほどショックだったのか、彼は黙って静かに歩き始めた。