ジュノはすぐそばの遺跡の柱に背中を付けて手を組み落ち着いた表情で立たずんでいた。

彼女は、何気にナキアを見詰める。




何処かで見た様な......




何処かで会った様な......




だけど、思い出せない。



ナキアはこちらに視線を向けると近づいて来た。

ジュノに接近すると首筋の匂いを嗅ぎ、ニヤリとした。当然、ジュノは嫌な顔をした。

「久しぶりだな。......君は覚えて無かろう」

「誰なの? ......あなたは私の何を知っているの?」

「ジュノ。相手にするな、そんな奴」

カゲンは言った。

「教えてもいいが、後悔する......。お前らもな。ははは......。では、これにて失礼するよ。頑張りたまえ」

すると、ナキアはヴァイス帝国方面の北へと歩いていった。

「..................馬鹿な......遺跡から北への通路は千年も昔に封鎖されたはずだ」

「あの方向はヴァイス帝国への近道よ。奴はヴァイス帝国へ向かおうとしているのよ。彼が何しにこんな所に来たのか。......それは確信ね」

「っとなると、封鎖されたはずの道は開かれたって訳か」

「..................そんなはずはない。アムールの平和を確実に守るべく、ここから続くヴァイス帝国への通路は永久に封鎖する契約を女王はしていた。............俺でも、それだけは覚えている」

「じゃあ......」

「秘密の通路を帝国が内密でつくり上げた可能性が高い......」

「確かにな。じゃ、通路を確認しに行こうぜ」

「いや、俺が行く。......君は心配だ」

「共感」

「ジュノまで、何だよ」

空は陽が沈もうとしていた。
あたりは薄暗くなってゆく............。

「それに、もう遅いわ。後はエンデュに任せて、私達はここを出た方が良さそうね」



........................二人が遺跡から出ていく背後
で古い柱の後ろから、ぎらついた瞳をした
大きな熊のような黒い影は二人の後ろ姿を
見つめていた......。