「エンデュ?」

理子は、顔色をうかがった。

「あぁ......神話は ......ただの、作り話
だ」

「やっぱりそうなんだ......」

「......理子。一つ君に聞きたい。本当に頼みを聞く気があるのか、無いのか」

「あ、あるわよ」

「......ならいい」

すると、ひと欠片になってしまったストーンを理子に見せた。

「これを預かって欲しい。......君の心の中で」

「え? ......それって、どういう事ですか?」

「神の力を宿す石を元に戻すには、神の力と人間の心を結びつけるしか手が無いそうだ。......その為に、君にこれを頼みたい」

「............え」

「嫌か?」

「ち、違いますよ。ただ......」

「......なんだ?」

「どうやって、心の中に?」

「......簡単なことだ。胸元から入れるか口から入れるか。君はどちらがいい?」

「............む、胸元って。............嫌、絶対に嫌です」

理子は顔を赤くした。

「なら、決まりだな。ただ飲みこめばいいだけだ。......簡単だろう?」

「え。これを、飲み込むんですか?」

「理子、俺に手間をかかせないでくれ。ただ飲み込めばそれでいい」

すると、ドアが開く音がした。
それは里親の美香だった。

「理子、いつまで友達といる気なの?もう遅いわ。帰らせなさい」

「う............うん」

美香はそれを言うと部屋を出て行った。

「ごめんね」

「......謝るな。しかし、君が俺に手間をかかせた事でこうなってしまった」

「ほ、本当に、ごめんなさい」

「だから......謝るな。後日に会いに行く。............いいな?」

「うん......」

するとエンデュは立ち上がり、出て行く。

「......待って」

理子はエンデュのほうへ駆けつけた。

エンデュは、冷静に顔色ひとつ変えず
凛とした表情で理子に振り返る。

「途中まで、送って行きたいの」

「......いや、大丈夫だ」

それは、冷たい口調だった。

そして、そのまま彼は立ち去って
行った......。