「何それ......ただの、ただの、ガラクタじゃないか」

「それじゃあ。この、ただのガラクタを少しの間預けさせてもらうから」

「何故、こんなものを?」

「……いいから、横になりなさい」

その方が都合がいい。

睡眠薬ならすでに、目に指した。それは、目薬の様に目に指すタイプのものであり、この睡眠薬をさせば、たちまち、この目に目を合わせたターゲットは横になれば直ぐに眠りにつく。

しかし、そう上手くいくものではない。彼は戸惑っている。

「……ほら……早く」

彼女は翔の胸元に軽く手をあてて、呟いた。

翔は、彼女のおもむろな瞳を見ると、ようやく、ゆっくりと横になった。

ジュノはベッドに手を付けると翔の顔
に顔を接近させた。

「............私の目を見なさい」

彼は、ジュノの目を見詰めた。

赤紫色に変色した彼女の目は、昔、よく絵本で読んだ暗森の吸血鬼さんによく似ている気がする。


......やがて、彼は眠りについた。


直ぐ様、ストーンを彼の胸元に押し当てた。

その時、廊下から、誰かがこちらへ向かって来る足音が聞えて来て、ジュノは振り向いた。

スタスタスタ。

焦りから、彼女の額からは、ひんやりとした汗を足らりと流れる。

ジワー……。

じんわり焼けるような音が立つ。

早く…しないと。

紫色のストーンはやがて、彼の胸の中へ溶け込んでいき、消えていった。

ジュノは、ふうっと息をついた。

廊下の方から聞こえる足音は、先程よりもかなり近づいている。

「……行かないと」

焦った表情を浮かばせると、彼女は踵を返した。