ストーンメルテッド ~失われた力~

しかし、我に返ったカゲンは、調子に乗り、どんどん火の塊は大きくなった。

ジュワジュワ……。

が……突然、火は燃え尽きた。

調子に乗り過ぎた俺に、天の神から罰が下ったのか、それとも、やはり力が弱まっているせいなのか。

いずれにせよ、もう、人間界で必要以上、力を使うことはしないとしよう。それが一番安全だ。

「カゲンって、何者?」

腰を落としたまま、隼人は言った。

「ふん、良くぞ聞いてくれたな」

上から目線の口調で、カゲンはそう言った。

「火と戦いの神だ」

隼人は、耳を疑った。

神……?

冗談、だよな。彼の頭の中は混乱している。

「ただ、お前に願いたい。このために来たんだよ」

そう言って、カゲンはレザーズボンのポッケから、一欠片の真っ赤なストーンを取り出した。

「願うって何を……」

それは、震えた口調だった。

「コレを、預かってくれ」

隼人は、カゲンの手の平にのった真っ赤な宝石の欠片の様なものを見つめた。

……意味が分からん。ただの石か何かだろう。一体、この人は何がしたいんだ。

「何なの?」

「神の力を宿す石。なんでも、ストーンが溶けると神は神でなくなる。そう、聞いた」

真っ直ぐな瞳をカゲンは向けた。

……だから、俺に何とかしろと……言っているのか?

隼人の顎はプルプル震えていた。

「じっとしていてくれよ」

そう言って、カゲンは腰を抜かして座り込む隼人に近づいた。隼人の心臓の音は恐ろしさでバクバクと跳ね上がる。

……この人は、一体、何を?

彼は、隼人の胸元にストーンを押し当てる。すると、ストーンは熱を帯びながら彼の中に溶け込んでゆく。

……ジワー。

それは、何かを焼く時の様な音と似ている。

彼の胸は焼けるように熱くなっていた。そして、真っ赤なストーンは彼の中へと消える。

「ストーンは今、お前の心の中に宿っている」

そう言い残すと、カゲンは踵を返して屋上から出て行った。

隼人は、おもむろに立ち上がると、呆然とした表情を浮かべ、立ち尽くす。

「......俺、保健室行った方がいいかな。ついに精神病になったか..................」