「 神の力を宿す石が溶けるなんて......。 700年前に起きた あの事件と似ています」

オグドアド国の女王のネイトは言った。

「......ま、まさか。 ルシファーの事件のことと!!」


ゼファーの声はベッドで泣き崩れていたセレネに、はっきりと聞こえてきた。

「..................ルシ......ファー?」

何処かで聞いたことがあるような無いような名前だ。


「ゼファー、声を落とせ。私の娘の部屋はここから近い事を知っているだろう。セレネの近くでルシファーの名前を大声で言うな」

「すんません」

ゼファーはヴィーナスのお怒りぶりに腰を引く。

「ネイト。とりあえず、ルシファーの過去を滲み込ませた書を読み上げて欲しい。
関連性があるかもしれない」

神の世界では、神も人間も含め一人一人の過去を書に滲み込ませた書が存在する。

それを元に神は一人一人の情報を得たりしていた。

ネイトは表紙も中身も黒く染まった書を胸元から取り出した。

そして、読み上げる。

「光を操りしこの者は、悪魔によりストーンを溶かされた。

元に戻す術を行い人間の手を借りた後にストーンは戻された。

数日後、愛した息子を置き去りに邪神の力を手に入れるべくして、“ 心殺の門 ”を開いた。

それを元に、大切な物や人は心から消え去った。

息子の事は忘れて 野望と邪悪な心だけが残り......この者は邪神に変貌した」


「我々世代なら、誰もが知っている事ではないか」

「だから問題なのだ。三人のストーンも悪魔が原因だとすれば、危ないだろう......」

「誰が溶かしたにせよ、ストーンをこのままほっておく訳にはいかないのでは?」

「......わかっている。ネイト、やはり人間の手を借りるしかないだろうか?」

「えぇ。それ以外には打つ手がないので」

「よかろう」

「本当に大丈夫なのか? ..................確かカゲンは、ルシファーの」

「ゼファー、その事は二度と口にするな。私も分かっている」