電話機を彼女は取った。

そして、すっかり乾ききった上下の唇をおもむろに引きはがして、言った。

「......もう、終わりに」

この部屋の中、その無感情で、うつ状態の様な小さな呟き声は、静かに響きわたった......。




しかし、それは、丸で夢だったかのように彼女は、自分自身を取り戻した。

笑顔も、汚れた様な目的なんかで笑う顔ではなくなった。

心して、純粋に笑う姿を取り戻していた。

............意を決して、正解だった──と、彼女は思う。




「おかえり」

「ただいま」

こういう、何気ないヘリオスとの会話すら、笑みを浮かべていた。

「あの曲はもう弾かないの?」

「あの曲って?」

ヘリオスは、首をひねらせた。

「太陽ノ光」

色気を感じさせる笑みを浮かべながら、ヘリオスの茶色い目を見詰めた。

「あの曲は、ヴィーナス様の誕生日会に使われる曲なんだよ」

「......でも、私は弾いて欲しい」

そう言って、ジュノはおもむろな瞳をヘリオスに向けた。

何気ない会話をする上で、このベッドの居心地は温かで落ち着けた。