ストーンメルテッド ～失われた力～

ある日の昼間、ジュノは、怪我を負ってしまったと言うヘリオスの真っ赤な指を治療するのに、互い、ベンチに座った。

「多分、ピアノの引き過ぎね」

そう言いながら、ジュノはヘリオスの四指を遊ぶようにひねってみた。

「あ、痛っ！」

ヘリオスは、あまりの痛みで眉を寄せる。

すると、彼の表情を見たジュノは、小悪魔っぽく、笑い出した。

「っふ。大丈夫よ、直ぐに治せるわ」

そう言って彼の四指に触れると、ジュノは目を瞑った。

そして、目を開くと四指に触れた手を、離す。

ヘリオスの指は、赤みが消えていた。

確認をしようと、ヘリオスは、自分の指に触れる。それは、つるりとなだらかな肌質だった。元の自分の肌質に戻った証である。

「ありがとう。そう言えば、ナキアと付き合っているみたいだけど......」

ヘリオスは、一息つくと、再び口を開き、言った。

「あいつは辞めておいた方がいい」

「それは、何故？」

「この頃のナキアは、頭がおかしいらしい。......噂がたっている。裏で、ヴァイス帝国と関わりがあるとか何とか。」

「ヴァイス帝国？ まさか、そんな事って......」

「ただの、噂だからな。その内、尽きるさ。だけど......ちょっと」

すると、ヘリオスは言葉を閉ざした。

「何？」

ジュノは、その続きを問う。

「君が心配だ」

ヘリオスは、優しい口調でそう言いながら、ジュノのおもむろな瞳を見つめた。その瞳......深いダークブラウンで、キリリとした目力には、魅力的で綺麗に感じるものだった。

「今度、もし良かったらディナーでも」

ヘリオスはそう言った。

そうして、ジュノはゆっくり微笑んだ。