ストーンメルテッド ～失われた力～

《黒い巣》は、こうしてオープンした。ラピスが考えに考え抜いて、作り上げた夜にのみ開かし場所......黒い巣。この場所の存在は、闇の神や薬の神、それから夜の神や暗黒の神と言った神にのみ伝えられる事となった。つまり、黒い巣を自由に行き来が出来るのも、そういった神にのみ、許されるものであった。

この日、ラピスに見せたい物があるとだけ、伝えられたジュノは、ラピスの後を追った。

そこは、噴水広場を抜けた先に広がる世界......黒い巣•ナイト通り。

そこに広がる世界は、同じアムール国内とは思えぬほど、ミステリアスで独特な雰囲気が漂っていた。この街の建物は皆、黒い。

「ようこそ、黒い巣•ナイト通りへ」

ラピスは、笑顔でそう言った。

「わぁー」

この街に見惚れたジュノは、周囲をきょろきょろと見渡した。

そうして、ゆっくりと歩いて行くと、大きな黒い帽子を深々と被り、うつむいた半透明の霊神の姿を目にして、ジュノはかん高く大きな声で言い出した。

「Mr.ハット!!」

Mr.ハットは口角を上げてにっと笑った。それは、大きな帽子を被り、うつ向いていても良く伝わるものであった。

二人が再開をし、嬉しそうな表情を浮かべている姿を見て、ラピスは思わず微笑んだ。そして、周囲の霊神の者達も同じように、微笑み出す。

実は、Mr.ハット。ジュノがアムール国に住むことになったと噂に聞きつけ、ここ、黒い巣•ナイト通りに引っ越すことに決めたと言うのだ。

しかし、Mr.ハットにも自分のこの噂が届いたということは、恐らく、迷い森•ダークネスの神々達も、ニュクスも現在ではすでに “この事” を、知っているかも知れない。