それから数日たったある日のこと。
アルは右足を痛めるように名も無き森から出て来るのを偶然、ジュノは見て、ぽっかりと口を開けた。彼の右足の脛にくっきりと何者かの歯形が付いており、そこから痛々しく血が滲んでいたのである。
そうして、二人は、森からすぐの場所、ケルノの家の近くにある、遠い昔に木が嵐で自然と倒れて出来上がった、丈夫な長椅子。ここは、一休みに丁度良かった。
木の長椅子に二人は座る。アルはズボンの裾をまくり、右足を彼女の方に向けると、言った。
「白虎の世話をしていたんだけど、あいつ、元気が良すぎるから......つい、興奮して、噛んじゃったんだよ」
ジュノは、傷薬にいい材料は持っていなかったため、素手で何とか完治させる事にしようと考えた。
ジュノは、優しく、ソフトに、アルの傷に触れると、言った。
「......アル。あの闇の精霊達も、いつかは、下部として、扱われてしまうの?」
「まさか。アムールでそんな事をする神はいないよ。大丈夫。あの子達は、友達同然だから」
アルは、気さくに答えた。
それを聞いた途端、ジュノの不安は一気に溶け、そして、目を瞑った。
そうして、彼女は目を開くと、ゆっくりと傷口に触れる手を滑らせた。
すると......魔法のように、傷は消えたのだ。まるで、最初から怪我なんてしていなかったかの様に。
唖然とした顔を浮かべるアルに、ジュノは、微笑んだ。
それからと言うものの、月日が立つと、闘技場などで怪我をした子供達にも、傷の手当てをする日がいつの間にか、増えていた。
闘技場でじっと座り込むこの少年、足をくじいてしまったと言う。
こんな事で大袈裟な──そう思うものの、ジュノは少年に近づくと優しく、言った。
「大丈夫。すぐに良くなるわ」
「で、で、でも! 立ち上がる事が出来ないんだ」
むきになって、少年は言った。
「......いい事? この程度の怪我なら、立ち上がる事は、そう困難ではないわ」
ジュノは、そう説明をしながら、少年のくじいた右足首に手を触れた。
そうして、ゆっくりと......彼女は手を滑らせる。
「はい、終わり」
そう言うと、ジュノは素早く立ち上がり、踵を返すと闘技場から、あっという間に去って行った。
......向かう先は、続いての患者様だ。
少年は、こんな事でジュノを呼び寄せた事を恥じたのか、むすっとした表情を浮かべ、周囲の視線を感じながら、気恥ずかしそうに、無言で立ち上がった。
アルは右足を痛めるように名も無き森から出て来るのを偶然、ジュノは見て、ぽっかりと口を開けた。彼の右足の脛にくっきりと何者かの歯形が付いており、そこから痛々しく血が滲んでいたのである。
そうして、二人は、森からすぐの場所、ケルノの家の近くにある、遠い昔に木が嵐で自然と倒れて出来上がった、丈夫な長椅子。ここは、一休みに丁度良かった。
木の長椅子に二人は座る。アルはズボンの裾をまくり、右足を彼女の方に向けると、言った。
「白虎の世話をしていたんだけど、あいつ、元気が良すぎるから......つい、興奮して、噛んじゃったんだよ」
ジュノは、傷薬にいい材料は持っていなかったため、素手で何とか完治させる事にしようと考えた。
ジュノは、優しく、ソフトに、アルの傷に触れると、言った。
「......アル。あの闇の精霊達も、いつかは、下部として、扱われてしまうの?」
「まさか。アムールでそんな事をする神はいないよ。大丈夫。あの子達は、友達同然だから」
アルは、気さくに答えた。
それを聞いた途端、ジュノの不安は一気に溶け、そして、目を瞑った。
そうして、彼女は目を開くと、ゆっくりと傷口に触れる手を滑らせた。
すると......魔法のように、傷は消えたのだ。まるで、最初から怪我なんてしていなかったかの様に。
唖然とした顔を浮かべるアルに、ジュノは、微笑んだ。
それからと言うものの、月日が立つと、闘技場などで怪我をした子供達にも、傷の手当てをする日がいつの間にか、増えていた。
闘技場でじっと座り込むこの少年、足をくじいてしまったと言う。
こんな事で大袈裟な──そう思うものの、ジュノは少年に近づくと優しく、言った。
「大丈夫。すぐに良くなるわ」
「で、で、でも! 立ち上がる事が出来ないんだ」
むきになって、少年は言った。
「......いい事? この程度の怪我なら、立ち上がる事は、そう困難ではないわ」
ジュノは、そう説明をしながら、少年のくじいた右足首に手を触れた。
そうして、ゆっくりと......彼女は手を滑らせる。
「はい、終わり」
そう言うと、ジュノは素早く立ち上がり、踵を返すと闘技場から、あっという間に去って行った。
......向かう先は、続いての患者様だ。
少年は、こんな事でジュノを呼び寄せた事を恥じたのか、むすっとした表情を浮かべ、周囲の視線を感じながら、気恥ずかしそうに、無言で立ち上がった。


