恐らく、サンと同じくらいの年頃だろう。
その、何千年もの間生き続けているであろう古びた人面樹に背中で軽くよしかかっている若者は妙に不自然で目立っていた。
そして、その人面樹。花、一つ一つに顔があり、その花は皆、退屈そうな表情を浮かべていた。さらに、木の部分にも大きな顔がある。赤い目に、大きく裂けるように開く口......。こいつも、どうやら退屈をしているようで、居眠りをしていた。
金髪と切れ長の瞳が魅力的な一人の少年は言った。
「......あんな神が、この当たりにいただろうか?」
すると、金髪の長髪で澄んだ瞳を持つ、ヴィーナスによく似た容姿の少女は言い返す。
「確か、あの男の人、ユグドラシルの神よ。お母様と用事でユグドラシルへ行った時に、見かけたことがあるわ」
そう、会話をしていた途中、二人の神は若者の前で説教をしていた。
「おい! 他国の者が参加する事は禁じられているのだぞ」
「し、知らなかったんだよ! それに、凄い新入りが今日、アムール国に来るって噂が、ユグドラシルでも広まっていたものだから、どうしても、つい、その新入りの女神を見てみたかったんだ......」
反省をしたのか、その目つきの悪い若者は、うつ向いた。
「まず、ユグドラシルへ返すから、名前を教えるんだ。親御さんにきっちりと説教させない訳には始まらないぞ? 坊や」
ジュノからすれば、お兄さんだが、いい大人からすれば、確かにまだ、坊やかも知れない。
「......ナ、ナキア」
「そうか、じゃあ、ナキア。家へ送るから、ついて来るんだ。いいね?」
そうして、しょんぼりした雰囲気で、ナキアはホールから出ていった。
ふと、内心、ジュノは思った。
きっと、サンか......サンの言っていたオーディンと言う神のどちらかが、私の事を周囲のユグドラシルの神に伝えていたのだろう、と。
だって、それ以外には、考えられないもの。
まったく......。
そして、ジュノはため息をついた。
「“っふふふ。行きましょう”」
瓜二つの双子の姉妹は声を揃えて言うと、こちらへ一目散に向かって来た。
「宜しくね。私、ナーサティア」
「私は、ダスラよ」
二人とも、きらきらとした瞳で見つめて来た。
「......宜しくね」
戸惑いながら、ジュノはそう言った。
すると、どんどんジュノの周りには神々の山になっていった......。
「なぁ、俺も話したいんだけど......」
「私が先だもん!」
何だか......揉め事にもなってしまっている場所もある様だが、そんなにも......私は、凄い女神なのだろうか?
そんな疑問がふと、彼女を横切った。
しかし、我に返ったジュノは、笑顔で皆と会話をいつの間にか............楽しんでいた。
その、騒がしい声に目を覚ました人面樹の花達は皆、笑い出し、木の部分の大きな顔をした、そいつは、裂けるほど大きく口を開き、ニタニタと笑い出した。
「ヒッヒッヒッヒッ」
まるで、それはそれは魔女のように......。


