話はここに至る。

数日前の晩............。



ガラスのように透き通るピエール洞窟。

今日も、当たり前のようにこの場所へ来た。

もちろん、これも彼女の仕事。ヴィーナスは、ストーンを一つ一つ、確認していく。

ストーンは水晶のように美しく丸々とした形であり、それには古い時代に使われていた記号の様な文字で神の名がそれぞれのストーンに刻まれている。

色が皆違うのは、神の才能が皆違うからだ。


ストーンが傷一つでも着けば神の力は弱まること、それはこの世界では常識だ。

そして、完全にストーンが消えてしまう様なことがあれば当然ながら神は力を失い神でなくなるのである。

すらすらと当たり前のように、確認は進んでいく。

いや、彼女の手が真っ赤に染まるストーンに手を付けた途端、彼女の手はぴたりと止まった。

微かに、ヴィーナスの手は震え上がる。まさか……こんな事って。

明らかにこのストーンの様子はおかしい。ストーンは丸で、熱に溶け、歪な形となった飴玉のようだった。



どうしてこんなことに........。




通常、頑丈なこのストーンが溶けるなどありえない。

どう考えても誰かの仕業であるとしか考え様が無かった。


この火の力を宿した神の力は見る見ると弱まっていくことだろう。

……そうなってからでは遅いのだ。

早くにも、他のストーンの確認を済ませよう……。

再び、素早い動きで、ヴィーナスは一つ一つ、丁寧にストーンの確認を行っていく……その内、他にも似たように溶けたストーンは二つ見られる。




一体何がどうなっていると言うのか........?




....................この三人に危機が迫っている可能性があるかもしれない。