キーンコーンカーンコーン......。
気が付けば、チャイムは鳴っていた。
周囲の生徒達は、部活へ向かう者か早く帰ろうとさっさと教室から出て行く帰宅部の者。いつものように、この日も、その二種類だけだった。
......私以外は。
「......理子」
背後から、とっくに聞きなれた微かな声が聞こえる。
「もう、出て来ていいよ。......誰もいないから」
振り向きながら、理子は言った。
すると、誰も座っていなかったはずの後ろの席。そこで、徐々に姿を現したのは、エンデュだった。
「凄いね。......そんな事も出来ただなんて」
理子は、絶賛をする。
「......元々はな。溶けたストーンの影響で、出来なくなってしまっていただけだ。......そんなに凄いことでもない」
冷静にエンデュは、答えた。
「そうなんだ。......って、ことは。もうストーンは大丈夫だね。それに、人間の心配もする必要はなくなったね」
「......あまいな」
そう言うと、エンデュは席から立ち上がり理子の席の傍へよった。
すると、エンデュは徐ろに口を開く。
「ストーンの力は、君のお陰でこれまで以上だ。そのストーンの力に俺は、まだついて行けていない。それに......人間の心配はする」
「......そうだよね。人間達の心配はしなくっちゃね。だって、神様だもん」
「違う」
即答で、エンデュは言った。
「え......違うって......?」
「君だ。......心配なのは、君だ、理子。
この環境下、その精神状態。俺なしで、これまでどおりスムーズに学校に登校する事が出来るとは、到底思えない」
「だ、大丈夫だよ。だって私、エンデュと出会う前から、辛くても頑張ってたんだよ?」
「......だから、心配なんだ。君がもし、俺と出会うことがなかったら、今、こうして辛くても平気な顔をする事など、出来ていただろうか?」
「っ......それは」
理子は、思わず喉が詰まった。
確かに......彼がいなければ、私はきっと今頃、孤独に押しつぶされて、苦のどん底に落ちてしまっているかもしれない。
そんな、思考が理子の頭の中を横切っていった。
「......頼むから、俺の気持ちも理解してくれ。理子」
なんだか、彼は、もの悲しげな表情を浮かべている様に見えた。