「そんなんじゃないわ」
拗ねたくなる佐伯くんの気持ちは私にも理解できた。私自身も時々、椿が目当ての男性社員に声をかけられるからだ。
きっと女性の方がこういうことに遠慮がないから、相手をする佐伯くんも苦労しているのだろう。
「で、なに?今回は助かったから特別に答えてやるよ。鈴木の何が知りたいんだよ」
私は思い切って切り出した。
「好きな色って……わかる?」
「好きな色?」
佐伯くんは呆れているようだった。
茶碗を買うのに色の好みが分からなくてずっと迷っていたのだ。
本人に聞く方がよっぽど早いが、せっかくだから内緒にしておきたかったのだ。



