手の届かない背中にだけ湿布を張ってもらい、あとは自分でやるからと救急箱を借りる。

ふたりの関係はさしずめ、秘密の共有者といったところか。

「時給1000円で良い?」

鈴木に仁志と呼ばれていたバーテンダーはカウンターに肘をついて、人の良さそうな笑みを浮かべた。

「何の話ですか?」

「君のアルバイトの話だよ」

「え?」

止める間もなく制服らしきベストとシャツを渡される。言い出したら聞かない性格なのか。最後には鈴木に耳打ちされた。

「看板持ちより安全だよ」

こうして、今日から俺も秘密の共有者に仲間入りを果たしたのだった。