「湿布と消毒液ぐらいしかないけど使う?」
そう言って鈴木は救急箱の中身をひとつひとつ取り出していった。
(やっぱり、鈴木だよな……)
自分の見たものが信じられなくて、もう一度確認するように上から下までその姿を眺めてみる。
家でガキどもとセカイジャーのDVDを見ている男と同一人物とは到底思えない。このバーに見劣りしない大人の男性に見えた。
「湿布貼るから背中向いてくれる?」
俺は素直に服を脱いで鈴木に背を向けた。
(姉ちゃんは知っているんだよな……)
会社での鈴木の様子を尋ねた時、妙に口数が少ないと思っていたらこういうことだったのか。確かにこの目で見ないことには信じられない。