「お前、バカだな」 樹くんはすっかり呆れていた。 「姉ちゃんだって、どうでも良い人間の分まで食事を用意して出掛けたりしないだろう」 皿を指さされてようやく気が付く。 事前に連絡していた訳でもないのにきちんと俺の分まで夕食が用意されていたのは、きっと俺がやってくることを想定していたからだ。 ……これはかなり嬉しい。 にやける顔を見られないように黙々と食事を口に運んでいると、樹くんの携帯電話が鳴った。 「姉ちゃん、今から帰るって。どうする?」