愛を欲しがる優しい獣


(随分なお人好しがいるものだな……)

今日は間違えずにコーヒーを買う。

そのままプルタブを開けて一気に飲み干すと、口の中にすっきりとした苦みが広がった。昨日と違って、待てども休憩室に佐藤さんは来なかった。

そう、俺は心のどこかで休憩室に来れば再び彼女に会えるのではないのかと、淡い期待を抱いていたのだ。

(本当にどうかしている)

さっきから彼女の顔と台詞が頭から離れなくて困っている。

人の親切を素直に受け取って、素直に返す人。優しい好意を惜しげもなく与える人。

そんな人がこの世にいるなんて思ってもみなかった。

彼女には世界はどんな風に映っているのだろうか。