俺は悪いと思いつつ正体がばれていないのをいいことに、少しだけ意地の悪い質問を佐藤さんにぶつけた。
「どうしてそんなに必死になって鈴木さんを探しているの?」
不躾なことを聞いたと思う。それでも彼女は答えてくれた。
「本当に嬉しかったから……」
頬を朱色に染めた彼女に俺の心臓がドキリと跳ね上がった。
「昨日、ミスばっかりしてすごく落ち込んでで……。そんな時、優しくしてもらって……。きっと覚えていないと思うけれど、お礼が言いたくて」
そして、彼女は寂しそうに笑った。
「あなたが最後だったんです。“営業の鈴木さん”って。お時間を取らせて申し訳ありませんでした」
そう言って深々と頭を下げると、彼女は営業部のフロアから立ち去って行った。



