「お帰り」

「た、ただいま……」

ぜえぜと息を切らして家に着くと、既に樹が朝食の準備を始めていた。

「手伝うわ」

コートを脱いで腕まくりしながら台所に入ると、私を見るなり樹は頭を抱えた。

「姉ちゃん、それまずいから」

背中を押されて台所から締め出されると、さすがの私も不快感をあらわにした。

「何よ?」

「首元、隠してこいよ。ガキには刺激が強すぎるだろう……」

(首元?)

私は指摘通り、己の首元に目をやる。

……そこには夥しい数のキスマークが浮かび上がっていた。

首元まで羞恥に染まる。

(鈴木くんのバカ!!信じられない!!)

私は心の中で今頃呑気に寝ているであろう鈴木くんに向かって罵声を浴びせかけるのだった。