最後に鈴木くんに抱き寄せられた時のことを思い出す。

“本当の望みを言ってよ”

……彼のぬくもりがひどく恋しかった。

まるで宝物のような日々だった。

鈴木くんと出逢っていくつかの季節が過ぎた。

いつだって家族が一番だった私の目の前に、彼は突然現れた。

彼が家にやってきてからびっくりさせられることばかりだった。

特撮ヒーローマニアだし。ゲーム好きだし。高級マンションに住んでいるし。政治家の息子だし。

大きな弟のように思っていたら、いきなり大人の男性の顔で迫ってくるし。

いたいけな少年のような目をしている時もあった。

抱き締められると嬉しくて、離れると寂しい。

微笑まれるとキュンと胸が高鳴って、見つめられると身体が火照る。

……いつからだろう。

この気持ちは明らかに他の物とは違う。

(……私の本当の望みは何?)