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通勤している間も佐藤さんからメールが来ることはなく、すっかり肩を落として出退勤ゲートをくぐる。

エレベータホールで順番待ちをしている列の中から、俺は目ざとく彼女の姿を見つけた。

……佐藤さんだ。

「おはよう」

おもむろに話しかけると佐藤さんがビクンと驚いたように肩をふるわせた。

「ひろむくんはあれからちゃんと寝た?」

「う、うん」

佐藤さんは返事もそこそこに、俺と1mほどの距離をおいた。

露骨に避けられるとなると理由を聞かずにはいられない。

「なんで避けるの?」

「だって鈴木くん、昨日と全然違うから何だか緊張しちゃって……」

佐藤さんはそう言うとおずおずと隣に戻ってくると、小声で尋ねた。