「佐伯くんは私のことを心配してくれたのよ」

邪推した鈴木くんに強い口調で告げる。

佐伯くんの名誉のためにも誤解を解かねばならない。

「……どうだか。渉に乗り換えるつもりだったんじゃないの?」

その言い草にカッと頭に血が上る。

「そういう自分だって関谷さんと食事に行ったじゃない」

「……佐藤さんがそうしろって言ったんだろう」

あっという間に反論されて押し黙る。

確かに鈴木くんの言う通りだ。

他にももっと相応しいひとがいると炊きつけたのは他ならぬ自分だった。

彼はあくまでも私の言ったことを忠実に実行しただけだ。責められるいわれはない。

心細くなってマフラーに顔を埋める。

……もう、戻れない。

“お別れ”を言った日で私達の緩慢な関係は終わってしまったのだ。