「よかったね」
男女の関係に悩まされることもなくなった彼女に労いの言葉を掛けると、俺はコーヒーを一気に飲み干して空き缶をゴミ箱に入れた。
そろそろ戻らないと、資料の山に埋もれて渉が途方に暮れているだろう。
「待って下さい……!!」
その声は休憩室中に響いた。幸いなことに他の誰の姿も見当たらなかったが。
休憩室から出ようとした俺を引き留めたのは関谷さんだった。
スーツの裾を引っ張る彼女の表情は必死そのものである。
「一緒に食事でもしませんか?この間のお礼もかねて……」
震える声で告げられると、俺にも本当の意味が伝わった。
(まずい……)
思わず頭を抱えたくなる。
こちらにそのつもりは一切なかったのに、好意を抱かれてしまったようだ。
……それも佐藤さんの後輩に。



