「渉、行くぞ。準備が途中だってわかっているのか、お前は」
「俺だって、可愛い女の子と楽しくお喋りしたい!」
「はいはい、外出が終わってからな。ほら、さっさと食べろよ」
鈴木くんが急かすように腕時計をトントンと指さす。
佐伯くんがスタミナ定食と格闘していると、おもむろに関谷さんが椅子から立ち上がる。
「あの!この間はありがとうございました」
「もう、気にしなくて良いから」
その口調から鈴木くんと関谷さんが初対面ではないことが窺えて、不思議に思う。
(いつの間に知り合いになったのかしら?)
……この間まで名前も知らなかったというのに。
「またね、関谷さん!」
スタミナ定食を完食した佐伯くんは鈴木くんに引きずられるようにして、社食を後にしたのだった。



