「ひろむくん」

「大丈夫。また来るよ。今度はDVDも持ってくるから」

鈴木くんの手がひろむの頭を大きく撫でた。

ひろむはようやく頷くと、鈴木くんから離れて一目散に自分の部屋まで駆けて行った。

「ごめんね、勝手に約束して」

「本当にありがとう。ひろむったらすっかり甘えちゃって」

私は正直に言って、ホッとしていた。

大人の狡さをひろむに指摘されて、ひどく動揺した。

姉として、母親代わりとして一生懸命やっていたつもりだったのに、ひろむに言われるまで忙しいからと理由をつけて約束をはぐらかし続けていたことに気が付かなかったのだ。

(ひろむを傷つけていたのかしら)

私まで落ち込んでいると、鈴木くんの暖かい声が振ってきた。

「俺は好きだよ、佐藤さんの家族。あったかくて」

携帯貸して、と言われて素直に差し出すと、鈴木くんは自分の連絡先を追加して返した。

「いつでも連絡して」